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言語とコミュニケーション - はじめに Vol.2 - 言語とコミュニケーション

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言語とコミュニケーション

目次

1. 原文

Language and Communication

  There are two communication abilities which are essential to cooperative behavior. One is the ability to exchange information and the other is the ability to regulate and coordinate human behavior. Our ability to speak is crucial to both activities. At the very least, exchanging information consists of asking questiuons and making assetions. And, the regulation and coordination of human behavior consists, among other things, of making requests, giving orders, making offers, and making promises, and so on. Each of these specific linguistic abilities involves performing an action with language, an action that would be difficult, if not impossible, to perform without language.
  Communicating consists in performing certain acts called "Speech Acts." One of the most interesting features of these acts is that there are certain social rules governing their use. If I wish to make a request of you, I must want this request performed; I must believe that the action I wish performed has not been performed; I must believe that you are willing to do certain things for me; and so on. The social relationsip between speakers and hearer determines how this request will be performed. If I enjoy greater social status than you do, I might give you an order (which would be quite impolite).
(1) Pick up that pencil!
Such impoliteness is rare. In order not to be impolite, I might weaken the order by turning it into a request.
(2) Please pick up that pencil!
If I wish to be especially polite, I might use an indirect request.
(3) Would you mind picking up that pencil?
As this example illustrates, studying speech acts can tell us much about the nature of social interactions. This should not surprise us, for communicating is a social activity.

(Michael L. Geis, Language and Communication, Oxford, OUP, 2001, p.1, ll.1-10)

2. 和訳

言語とコミュニケーション

 協力的に振る舞うことにおいて二つの不可欠なコミュニケーションの能力が存在する。一つは情報を交換できること、そしてもう一つは他者を制御し統制する ことができることだ。私たちが言葉を話せることはこの二つの能力において重要である。少なくとも情報交換というものは、質問を投げかけることと主張するこ とで成り立つ。そして、他者を制御・統制することは、他の物事において、要求すること、命令を下すこと、提案すること、そして約束を交わすこと等で成り立 つ。これらの特定の言語能力はそれぞれ、言語なしでは不可能とまではいかないまでも、それなしでは遂行が困難な行動を言語を活用して実行することを伴う。
 コミュニケーションを取ることの本質は「言語行動」と呼ばれる特定の行動群を遂行することにある。これらの行動の最も興味深い特徴の一つは、その行使を 制御する特定の社会的ルールが存在するということだ。相手に要求を出したいと思う場合、私はその要求が通ってほしいと思うに違いない。通ってほしいと願う 要求はまだ叶っていないことを私は知っているに違いない。そして相手は私のために喜んで特定の行動を起こしてくれると強く思っているに違いない、といった 具合だ。話し手と聞き手の社会的関係によって、この要求がどのように出されるかが決まる。もし私が相手より高い社会的地位を享受している場合、私は頗る失 礼な命令を下すという行動と取るかもしれない。
 (1) そのペンを拾え!
このような無礼はあまりお目にかかることはない。相手にとって無礼にならないように、私は要求と形を取って命令のニュアンスを弱めるかもしれない。
 (2) そのペンを拾ってください!
もし特別礼儀正しくいたいと思うなら、私はより婉曲的な要求をするかもしれない。
 (3) そのペンを拾って頂けないでしょうか?
この例が示すように、言語行動を研究することで私たちは相手との社会的相互影響の本質について知ることができる。これは驚くべきことではない。というの も、コミュニケーションを取ることは社会活動の一つだからだ。

3. 語彙

  • there [is / are] ~「~がある」
    • 場所の副詞を文頭に置くことで倒置を発生させ、新情報を強調する際によく使われる
  • essential <形容詞>「不可欠な」
  • regulate <他動詞>「~を制御する」
  • coordinate <他動詞>「~を統合する、調和させる」
  • crucial <形容詞>「重要な; 決定的な」
  • at the very least「少なくとも」
    • at least の強調
  • consist of ~「~で構成されている、成り立っている」
  • ask a question「質問する」
  • make an assertion「主張する」
  • make a request「要求する」
  • make an offer「提案する」
  • give an order「命令する」
  • make a promise「約束する」
  • and so on「(並列されたものの後において)など」
  • specific <形容詞>「特定の」
  • linguistic <形容詞>「言語(学)の」
  • involve <他動詞>「~を伴う; ~を含む; ~を巻き込む」
  • perform <他動詞>「~を遂行する、実行する」
  • if not impossible「不可能まで言わないまでも」
  • consist in ~「(物事の本質などが)~にある、存在する」
  • certain <形容詞>「(限定用法)特定の、とある; (叙述用法)確実な、確信した」
  • feature <名詞>「特徴、特色」
  • govern <他動詞>「~を統治する、管理する、統制する」
  • be willling to do...「喜んで...する」
  • enjoy <他動詞>「~を享受する」
  • social status「社会的地位」
  • weaken <他動詞>「~を弱める」
  • turn A into B「AをBに変える」
  • especially <副詞>「特に」
  • polite <形容詞>「礼儀正しい」
    • 反意語は impolite「無礼な」
  • interaction <名詞>「相互作用」
  • surprise <他動詞>「~を驚かす」

4. 分析

4-1. 二つの不可欠なコミュニケーション能力

能力 行動
情報交換ができる
質問する
主張する
他者の行動を制御・統制できる
要求する
命令を下す
提案する
約束を交わす

上記二つの能力はどちらも日常生活で誰しも意識・無意識関わらず行っていることなので、特別不思議なことではないが、こうして改めて考察しない限り意識することは少ない。
私たちは他者に質問をしてその回答を得たり、反対に自分の意見や信念を主張し相手に伝えることで情報交換を行う。
また、他者に要求や命令、提案をして行動を促したり、約束を交わして未来の行動を統制している。

一番重要なのは、対面であれ文字ベースであれ、これらの能力はことばを使って行使されることだ。
ことばを使わずにジェスチャーのみでの情報交換は可能だろうか。
不可能ではないが、伝わることと理解できることの精度は著しく下がるだろう。
また、他者の行動の制御・統制もことばを使わずに行うことができるだろうか。
暴力に訴える等非人道的な手段を取れば不可能ではないだろうが、およそ現代の文明社会に生きる私たちにふさわしくない。
やはり、言語活用にこれらの能力は大きく依存しているのだ。

4-2. 言語行動

相手への要求の通し方は、自分と相手の社会的な力関係に大きく依存する。
自分の社会的地位の方が上ならば命令によって要求を通すだろう。
反対に、相手の社会的地位の方が上ならば依頼という形を取るだろう。
日本語は特にハイコンテクストで婉曲的な言いまわしが多いが、英語にも程度の差こそあれ存在する。

昔学校で「丁寧な表現は過去形にする」と教わったことはないだろうか?
Can you ~? より Could you ~?、Will you ~? より Would you ~? の方が丁寧だといった具合だ。
これは過去形の本質を理解するとわかりやすい。
過去形の本質は離れていることだ。

  • I ate as many as three cups of icecream last night.「昨夜アイスクリームを3つも食べた」→ 現在から離れた過去のことなので過去形
  • If I was a millionaire, I would buy everything I want.「私が大富豪だったら、欲しいものを全て買うだろう」→ 現実には大富豪ではない、現実離れしたことなので仮定法過去
  • Would you mind if I smoke here?「ここで喫煙してもよろしいでしょうか?」→ 目上や初対面の人など、関係が離れているので過去形

上の3つの例文でお分かり頂けただろうか?
過去形で離すことで婉曲表現をしているのだ。
英語においても日本語においても、直接的な表現ほど失礼の度合いが高まり、婉曲的であるほど丁寧度合いが高まる、という意味では共通している。
最も、婉曲表現は行き過ぎると皮肉や慇懃無礼に繋がるので加減は必要である。

閑話休題、自分と相手の関係性を見極めながら要求の仕方を変えることから、ことばは社会的力関係を反映する側面を持っているのだ。

5. 参考文献

Michal L. Geis argues, Language and Communication, Oxford, OUP, 2001